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ウザい | ||
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方言字という存在を知った。Wikipediaによれば、 「方言字(ほうげんじ)とは、方言を表記するために作られた文字であり、中国語の方言を表記するための漢字を代表例とし、日本語の方言を表記するための国字なども含まれる」という。 例えば、 「『杁』または『圦』(いり)とは、堤防や土手などに設けられた樋(樋門)のある場所を意味する漢字(国字)。尾張国で生まれた方言字である」。 また、「『垳』(がけ)は、この地名ならびにこの地を流れる垳川の名を表記する以外には使われない、国字であり地域文字とされる文字である」。 さて、この事実に触れたとき、私の記憶の中にある言葉――「うざったい」 が浮かび上がった。 八王子に生まれ育った私にとって、この言葉はきわめて日常的だった。私の住んでいた地域では主に「見た目が気持ち悪い」という意味のみで使われ(「うざったい虫」など)、一方、三多摩地域の友人たちは「鬱陶しい」「面倒くさい」という意味で用いていた(「うざったい授業」など)。もちろん、カジュアルな俗語ゆえ、多くの場合、音便化して「うざってー」と発音されていた。 その後この語は短縮され「ウザい」となり、1980年代後半から90年代にかけて東京23区へ広がり、2008年には広辞苑にも掲載され、いまや共通語の地位を獲得している(参考:2018年4月14日|出没!アド街ック天国)。 私はこの変化を、言語学でいう「ドリフト(言語変化が社会に定着する現象)」として体感してきた。もっとも、厳密にそれに含まれるかどうかは定かではないが。 本作では、辞書に載る平仮名語としての「うざい」を、一つの文字へと凝縮させた。その構造は以下の通りである。 冠(うかんむり): 「う」の音を想起 中間部(左): 音符の「さ」を表すと同時に、古来より「左」が持つ「弱・不吉・邪」といった負の含意を込め、言葉のネガティブな心象を象徴 脚(ヰ): 「左」の「工」部分と縦棒を組み合わせ、古語の「い」を表現 さらに「左」を繋げて書くことで、視覚的に平仮名の「た」が浮かび上がるよう構成し、「うざったい」と「ウザい」の両方の音を一つの字の中に熔け込ませた。 また、作品の乾燥過程で生じる紙の「撚(よ)れ」をあえて残し、すっきりしない、不快で面倒な心の動きを視覚的にも表現した。 この創字が、いつの日か本物の方言字として歴史に刻まれるかどうか。 それは、文字のドリフトがもたらす未来に委ねたい(笑)。 |
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