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「なおざり」「おざなり」 | ||
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「なおざり」と「おざなり」は、発音が似ているため、しばしば混同されがちな言葉である。 本作2文字に共通する「ナ」は、「左」の一部であり、左手の象形文字に由来する。インド・ヨーロッパ語族においては、右が「強・吉・正」を象徴する一方、 左は「弱・不吉・邪」を含意することが多い。これは右利きが多数派であることに起因し、「左遷」や「不浄の手」といった文化的表現にも見られる。こうした背景を踏まえ、 「ナ」は本作においてネガティブな象徴として機能させた。 「なおざり」は、「等閑」などの漢字が当てられる。語源的には、「なほ(直・猶)+さり(去)」で、「なほ」は「そのまま何もせずにいること」、 「去り」は「遠ざける」という意味があるため、「何もしないで距離を置いておく(放っておく)」という意味である。 そのことから、本作(上画像)では、「ナ」をネガティブな要素(=「意符」)とともに「声符」として配置し、その内側に、放置の「放」を置くことで象った。 筆致においては、始筆からだらしなく、特に終筆部分を無造作に払うことによって「放置」感を表し、線の深みなどを一切排除し「ぞんざい」感を前面に押し出した。 一方、「おざなり」は、「御座成り」などと書き、宴会の席(御座敷)で表面的に形ばかりを取り繕った言動のことを指したものとされる。 本作(下画像)では、「座」の印象的な造形である「从」を最上段に置くことで「ザ」という声符を想起させる構成とした。 さらに「ナ」を共通要素として配置し、その内側に「適当」の「適」の旁を置いた。 「適当」は本来「適切」という意味であるが、現在は「テキトー」「いい加減≠良い加減」という意味(つまり、おざなり)もあるため、本作では後者の意味を採用し、 「適(の旁)」の造形により「表面的な対応」を象徴した。なお、「適」の 金文には「しんにょう」がないため、旁の部分のみを使用している。 また、「从」部分では左右の「人」の造形を書き分けることにより、様々な人による様々な希望・要求を暗示した。 「ナ」の横線にて、それらをいったん受け止めつつ「手のひらで転がす」様子を表し、縦線では若干の逡巡を表現することで、単なる放置ではない姿勢を示している。 さらに「適(の旁)」にて比較的きりっとした線質により、しっかり対応しているような印象を与えつつも、同じ線質の縦線を繰り返すことにより、単なる「マニュアル対応」的な空虚さも含ませた。 |
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